後見人と医療訴訟

98年に川崎市の病院で、こん睡状態の男性患者が期間内チューブを抜かれ、筋弛緩剤を投与され死亡した事件で、殺人罪に問われていた女性医師の上告が棄却された、というニュースが先日ありました。

この事件、私はうろ覚えで、ああ、そんなことあったなあ、程度ですので、この司法の判断がどうの、というのは自分の意見を持たないのですが、尊厳死問題など人の命に関わることに、法がどの程度これから先踏み込んででいくのか、興味のあるところです。

私が後見業務をした経験の中で、一度だけこういう場面に遭遇したことがあります。

こん睡状態の患者さん(後見人は私です)に胃ろうの処置を施す際に
同意書にサインを求められ、親族が近くにおられなかったので、
私が代理人としてサインしました。

それに先立って、
「後見人が医療行為の同意を求められた場合、どのような立場をとるか」という研修を弁護士から受けていました。

身内がそばにおらず一刻を争う場合、後見人が同意書のサインを求められた時、サインするのは人情でしょう。
しかし、それゆえになにかあった場合、それにサインした後見人は訴訟の対象ともなりうる。

弁護士でもその場合は、非常に葛藤がある、とのお話でした。

そのときは、
自分にそういう場面が降りかかったときは心せねば、と思っていましたが
まさにそういう場面が巡ってきたのです。

自分としては、法的な問題も含めて慎重を期して対処したつもりでしたが、
その後、この胃ろうのチューブを外してほしい、という要請が親族からでました。

胃ろうの処置を施すことにより、植物状態が長引くこと、
尊厳死の問題まで含めての議論でしたが、
担当医師の強い拒否で、それは成りませんでした。


カンファレンスの場で、結構緊迫した場面だったと記憶しています。
いくら慎重を期したとはいえ、サインした字は私の筆跡ですし。


私が後見業務は単なる人助けではない、と思うのはこんな時です。
もし研修を数多くこなし、ケーススタディを行っていなかったら、、、
単なるボランティアの市民後見人だったら、、、、
きっと、何も考えずに同情から同意書にサインしていたでしょう。

後見人を引き受けるだけではなく、能力担保をつけて、こういうことを伝えていくのも自分の仕事だろうか、と思っています。




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Posted by しかない行政書士事務所 at 15:53│Comments(0)成年後見制度
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